1990年代、私の翻訳者人生が始まった途端、複数のエレクトロニクスメーカーから機械翻訳が大々的に発売されました。新聞1面広告には「翻訳作業に時間を取られているあなたを解放します」みたいな趣旨のコピーが踊っていました。「自動翻訳」だったか「機械翻訳」だったか覚えていませんが、大変な衝撃を受けました。このまま翻訳を続けていいのだろうか。実際、翻訳者の道を諦めた人も多かったかもしれません。急いで高額な翻訳システムを導入した翻訳会社は、実用に耐えないことがわかり、それから長年、機械翻訳に懐疑的になってきました。
あれからわたしは、細々と翻訳業を続け、ルールベース翻訳、統計翻訳の小波は軽くかわしてやってきました。ルールベースや統計のシステムでは、突っ込みどころ満載で誤訳に笑わされ、楽しませてもらいました。それでも機械翻訳を使えば、1、2割でも使える訳文があったので、しっかりと、利用させてもらいました。
ところが、ニューラルネットワーク翻訳になり状況が一変しました。数年間蓄えた翻訳メモリを、PangeaMTの特徴であるDo-It-Yourselfの深層学習機能を使って学習させると、修正が不要な訳文が次々と飛び出してきたのです。わたしの翻訳のスピードは、毎時500~1,000単語になりました。これから、AI翻訳との長いつき合いが続くでしょう。